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米軍のアフガニスタン撤退について

 

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米軍がアフガニスタンから撤退した。

20年続いたテロとの戦いから台頭する中国やロシアなど正規軍同士の大規模戦闘に備えて転換する象徴的な出来事となった。

米軍のアフガニスタン撤退に合わせて市民もパスポートを求めて役所に殺到するなど混乱が広がっている。

元々米軍がアフガニスタンに侵攻したのは9.11以降のテロとの戦いの中で、テロの供給源となっている地域の安定化を目的としていた。

冷戦を通じてソ連に打ち勝った米国は世界の頂点に立ち、民主主義と資本主義が世界のスタンダードだと考えてた。

その絶頂期の米国に冷水を浴びせたのが9.11であった。

世界最強の軍隊を保有していながら多数の自国民を傷つけられた米国はその力を中東に使った。

当時は9.11のようなテロが世界中で頻発すると考えられており、自国民を保護する正義の戦いであると喧伝されていた。

そして中東に民主主義の考えを根付かせれば中東に住む人々の考えも変わるだろうと本気で信じていた。

だが冷戦時代に同じことを中南米各地で行い、ことごとく失敗していた事実から目をそむけていた。

アフガニスタンに侵攻し、中東で3本の指に数えられる大国イラクを瞬く間に蹂躙し幸先のよい戦いをしていた。

しかしその後はゲリラ戦に引きずり込まれ際限の無い戦いとなった。

アフガニスタンイラクで6000人以上の米兵が戦死しており、負傷者数、帰国後にPTSDと診断された人などを含めて米国が支払った代償は大きい。

何よりベトナムと違いアフガニスタンイラクでの戦いは米国でニュースで取り上げられることも少なくなり、自国民の興味もなくなったことで事実上隠された戦いとなっていた。

反戦運動の機運も起きず、米国は不都合な事実から目をそむけ莫大な資源を投入せざるおえない状況が続いてた。

しかし中国の台頭によって米国は救われることになった。

中国は太平洋に進出しようと海軍力を強化し、一帯一路構想によってユーラシア大陸や米国の裏庭である中南米にも影響力を拡大した。

AKやRPGなど小火器しか持っていないテロリストより大陸間弾道ミサイル保有する中国の方が脅威となった。

米国に敵対し米国の秩序に挑戦している中国を排除するため、米国は中東から戦力を引き上げ、中国周辺に再配置する一環としてアフガニスタンからも撤退する。

米軍撤退は南ベトナムの再現であり、現アフガニスタン政府は1年も経たない内に崩壊すると目されている。

政府崩壊後はタリバンアフガニスタンのほとんどの地域を支配することになるだろう。

だが政府というしっかりとしたものではなく、地元のギャングが市民からみかじめ料を徴収し好き勝手やる無政府状態となると思われる。

権力の真空状態は新たな勢力を呼び込む機運ともなる。

この場合隣接しているイラン、中国が勢力拡大を狙うかもしれない。

だがイランはシーア派であるため、スンニ派であるタリバンからモスクなどにテロを仕掛けられている側である。

イランはタリバンと友好を結べる状態でなく、影響力を行使できる状態ではない。

中国ならば真空状態をついて介入する可能性がある。

現在中国は隣国パキスタンと友好関係を結んでおり、パキスタンルートを使用してアフガニスタンにも影響力を伸張させることもできる。

米国はソ連と同じように対中包囲網を形成しようとしている。

ジョージ・ケナンがX論文で展開した封じ込め戦略を復活させるため、同盟国との連帯を強化している。

それに対して中国は独裁国家も含めて封じ込めから脱却しようと金の力を使い、一帯一路で多方面に展開している。

全ては包囲網を破るためである。

だが中国の行動は全て計画的なものではなく無鉄砲なものもある。

例えばパナマ運河保有しているパナマに一帯一路に参加を求めるなど米国を刺激する行動もとっている。

パナマを味方に引き入れたとしても、距離が近い米国の脅しにパナマは逆らうことはできない。

いたずらに米国を刺激することは中国にとって不利益を被ることもしている。

中国、タリバン支援の観測も…アフガン安定関与狙う - 産経ニュース

アフガニスタンは海と面していない内陸国である。

隣国はイランとパキスタンであり、そんな地域に中国が影響力を行使しても得るものは少ない。

アフガニスタン新疆ウイグル自治区は国境を面していることから治安維持を目的に介入したい腹積もりなのかもしれない。

だが治安維持だけに介入するには高すぎる維持費用になるだろう。

農業に適さない土地であるためケシの栽培が盛んである。

中国政府が否定する宗教を信仰し伝統が根付く土地がアフガニスタンである。

タリバンはもしかすると米国の次に中国とゲリラ戦を繰り広げる可能性もある。

どう進んだとしてもアフガニスタンは平和から最も遠い場所であることに変わりはなく、世界の関心から外れた場所として存在することになるだろう。

世界にとって都合の悪い部分を集めたような場所、混沌を煮詰めてできた乾いた大地、人が住みながらも人を寄せ付けないような場所がアフガニスタンだと思ってしまう。