私は誰かの知識によってできている

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2020年ナゴルノ・カラバフ紛争 について思うこと

2020年に発生したナゴルノ・カラバフ紛争が終結をみた。

中央アジアにあるアルメニアアゼルバイジャンが領有権を争っている自治区を巡って紛争が発生した。

近年は内戦が主体であり、国家間紛争はウクライナ領であったクリミア半島にロシアが攻め込み占拠した2014年以降となる(中東除く)。

両国とも大国でないため世界平和を祈念してやまない日本ではほとんど報道されなかったが、9月27日に始まった紛争は11月10日に4度目の停戦でもって合意に至った。

結果はアゼルバイジャンが勝利し領土の2/3位を奪い返した格好となる。

アルメニアは日本でいう8月15日の終戦状態となり、大本営発表から一転して敗戦となったため国民が激怒して国会を占拠したり暴動が続いている。

紛争中国際社会はコロナ対応のため積極的な支援が難しかった。

このため事態を収拾したいロシアと領土拡大欲求全開のトルコが裏で綱引きしていた。

 

今回の紛争では3つの点を抑えておけばいいと思う。

一つはドローンが大活躍したということだ。

ヨドバシカメラで売っているような安物ドローンではなく、軍事用に設計された1000万円以上するような高価なトルコ製とイスラエル製のドローンが勝利したアゼルバイジャンは大量に保有していた。

ナゴルノ・カラバフ自治区は平野が多く、展開していたアルメニア軍に対してアゼルバイジャンはドローンを使用した。

戦車や装甲車などを爆弾を搭載したドローンを特攻させて多数破壊した。

アルメニア軍はロシア製の対ドローン用の妨害電波を発する車両を投入したがイスラエル製のジャミングを検知して特攻するドローンの餌食となった。

このためアルメニア軍は平地に展開することを諦め、森林地帯に退却することになった。

森林地帯では視認性が悪くなったためドローンの効果が減退したが兵力・装備にまさるアゼルバイジャンが戦闘を有利に進めた。

各国はドローンを使用した戦争に驚き、今後軍事開発競争はドローンを中心に加熱することになる。

ドローン万能論を持ち出す輩もいる。

しかし対ドローン兵器も多数開発されることから一筋縄ではいかない。

だが明白なのはドローン対策を実施していない軍隊はドローンよって蹂躙されるという現実が顕在化した。

自衛隊は旧軍からの伝統で正面装備にこだわる傾向がある。

ドローンや電子戦といった見栄えしない兵器について冷遇する傾向がある。

逆に中国はドローンについても積極的に開発を押し進めている。

将来尖閣諸島で紛争が発生したときに自衛隊が対応できることを祈るのみだ。

 

2つ目は両国がツイッターで国民に直接呼びかけていたことだ。

非常事態宣言や戦果をツイッターでつぶやく時代となった。

戦果は画像や動画で拡散され、アゼルバイジャンのドローンがアルメニア戦車や装甲車を破壊する様子を見ることができた。

湾岸戦争のトマホークが建物にぶつかる映像がスマホで見れる時代となったのだ。

面白いことに両国とも大本営発表をして動画や画像を加工して戦果を誇張しており、海外の分析班がフェイクかどうかチェックしたり、映像を収集して実際の戦果がどうなのか検証するサイトもあった。

両国が正当性を主張する中で戦争犯罪の様子もツイッターで拡散された。

アゼルバイジャン兵が捕虜にしたアルメニア兵を処刑すると思われるシーンや逆にアルメニア兵がアゼルバイジャン系住民を虐待したりするなど負の側面もあった。

かつて米軍はベトナムで報道機関によって反戦運動や軍のイメージダウンを受けた。

湾岸戦争では報道規制をすることでそういった負の側面を隠すことに成功した。

だが令和になって一民間人によって拡散される事態となっている。

戦地での軍人の振る舞い方について気をつけなければならない時代となった。

 

3つ目は武力により領土の変更が可能であることを改めて証明してしまったことだ。

2014年のロシアがクリミア半島を奪ったことは大国ロシアであることが正当性を担保していた。

NATOも米軍もロシア軍と戦争できる状態ではなく、意思もなかった。

だが今回は中小国同士の戦争で可能な事例を作ってしまった。

領土問題を抱えている国は非常に多い。

今後中小国同士が今回の紛争を踏まえて戦争をする可能性を生み出してしまった。

また大国の抑えがきかなくなりつつある事実を明らかにしてしまった。

冷戦も冷戦後も領土の変更は許さないという姿勢を大国は持っていた。

しかし今回の事例によってその体裁も保てないほど弱まっていることを示してしまった。

日本にとっても他人事ではなく、中国による台湾侵攻や尖閣諸島や沖縄等に対する浸透工作などが活発化することが想定される。

自分の国は自分で守らなれければ奪われる時代に入ったことを証明する紛争となった。

私は今回の紛争をWW1前の日露戦争だと思っている。

日露戦争は機関銃で防御された陣地に対して突撃する戦争や海上封鎖や決戦という数10万人がぶつかる大規模な会戦が発生するなどWW1で日常となる光景がすでにあった。

列強各国は大国ロシアと小国日本の非対象性によって行われた特殊なものと考えた。

しかしWW1によって1600万人の戦死者を生み出すことになった。

今回の紛争も新戦術や新しいテクノロジーが使用された紛争であり、教訓を多く獲るチャンスとなっている。

チャンスを活かすことができる軍隊はより強力となり、領土の拡大も含めて国力増大できる可能性が出てきたことになる。

いつの時代も「汝平和を欲さば、戦への備えをせよ」の格言が真理であることが改めて証明されたのだ。