労働力不足についての雑感
人手不足が叫ばれている。
中小企業にも人が集まらず、廃業せざる負えないところもある。
しかし政府の労働力調査では完全失業率は2.5%(2019年1月にて)であり、2017年から横ばい傾向が続いている。
統計局ホームページ/労働力調査(基本集計) 平成31年(2019年)1月分結果
最も統計が正しいかという問題はあるが、働きたくても働けないという環境でないことはメディアや社会の雰囲気からも感じ取れる。
すでに完全雇用状態になっているにも関わらず人手が足りないという現状は少子高齢化に伴う労働人口の減少に答えがいきがちになる。
その労働力不足の補填のために外国人労働者の就業拡大を促したりする流れができている。
しかし現在の労働力不足は一時的なものである。
なぜなら今後の社会は2055年には1億人割試算もでているからだ。
1 高齢化の現状と将来像|平成29年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府
人口が減少すれば市場は小さくなると言われている。
政府は人口減少に伴う補填として外国人労働者を入れるつもりだが、彼らに日本人と同等の購買力はなく、さらに低賃金で働かせることは目に見えている。
なぜなら労働組合や転職といった労働者が権利として持っているものを取り上げられた状態で日本に来て働くため、虐げやすい存在となる。
外国の地で頼れる人もいない。
家と会社との往復という非常に狭い環境に閉じ込められることとなる。
逃げる場がないため現状に甘んじるしかなくなってしまう。
実際外国人労働者がすでに脱走していることも報道されている。
問題なのはこういった脱走した人たちが駆け込み寺等に逃げずに各地を転々とする生活をすることだ。
収入は窃盗や強盗といったもので賄うようになってしまうことも懸念される。
また労働力不足は本来日本人の賃金上昇に寄与するはずだった。
完全雇用状態であれば労働者の取り合いとなり、賃金上昇へ転化する。
しかし賃金上昇はほとんどなく、増税に伴い手取りが減少している。
原因としては非正規社員であるパートや派遣社員の増加と正社員になれない人が多くいることによるものと推測されている。
日本企業は長きに渡って労働者を低賃金でこき使ってきた歴史がある。
EUやアメリカでは日本の総合職と呼ばれる人々は一部しかいなく、しかも高所得者が多い。
しかし日本では正社員になること=総合職という認識が遍在している。
最近ではエリア限定の総合職というものもでてきたが、問題なのは労働者に何をさせるかということが明確でないことだ。
ある仕事があり、人手がいないから補充するということで雇う。
しかしその仕事がなくなったら解雇は日本の法律上できない。
このギャップが昭和時代の終身雇用制度があった時代には労働者に有利に働いていた。
安定した給与が毎月支払われることとなるからだ。
だが時代は代わり終身雇用制度は崩壊した。
その結果解雇はできないが終身雇用もできないという労働者にとっても、企業にとっても損していることとなった。
制度の硬直化は一度雇ったら解雇できないという労働力の流動性欠如により、企業が正社員の雇用に後ろ向きとなっている。
そのため使い捨てしやすい派遣やパートに頼ることになる。
また物価やサービス価格に対して投入する資源量も多いことが問題である。
例えばドラッグストア等でキャンペーンのために人を立たせて呼び込みを行わせたりすることも一つだ。
手の空いた時間でやらせているというが、いつしか呼び込みが定例業務に組み込まれ、何故やっているかを誰も知らないが業務としてやっていることはよくある話だ。
仕事には金を生み出す業務と金を生み出さない業務ある。
金を生み出さないが事務といった必要不可欠な業務とやったほうが売上やサービス向上のため2種類がある。
問題なのはサービスや売上向上のために行われている業務を金を生み出すものと勘違いしていることにある。
金を生み出すのは客が商品やサービスを買ったことで生まれる。
客は商品やサービスそのものがほしいため購入を決めた。
しかしサービスや売上向上のために行われている業務は購入に直接結びついているわけではない。
呼び込みをしたからといってふらっと入る人が一体どれだけいるのだろうと思う。
店舗の活気を演出したり、目に止めてもらうためならばスピーカーで流せば同じ効果を得られる。
風俗店に案内するキャッチという職業が成立するくらい、元来呼び込みは技術が必要である。
しかしそのへんの高校生をアルバイトして雇って店頭で叫ばせているのは呼び込みとはとても呼べない。
そういった無駄な業務がたくさんあるのが会社という組織である。
大きな会社になると特に本社にいる殆どが自分たちで金を生み出さない仕事を延々やっていることも多い。
金を生み出さない仕事を創出するのだ。
特に働き方改革にかこつけて説明用の資料作成や現場を無視したシステム開発といったことを創出している。
結果としてその業務すべてがやる必要を問われないが不必要な業務や部署が生まれる。
21世紀になり卸とよばれる中間業者はどの業界でも数を減らしている。
第一次産業でも直売所やネットで客と生産者が直接取り引きしたり、スーパーが畑丸ごと購入といった事が行われている。
同じことが企業でも起こってもおかしくはない。
本社機能が縮小し客と直接接点をもつところの比重が大きくなると予想される。
今は値上げをするところがまだまだ少ない。
しかし今後はどの企業も値上げをせざる負えない。
値上げに伴い、安かろう悪かろうという商品は自然淘汰される。
せっかく買うのだからということで客は価格に対しての価値を厳正に図ることとなるだろう。
その結果として無駄な業務をしていることによって商品価格に反映している企業とコストカットを適切に行なっている商品価格は同額であった場合後者に軍配があがることとなる。
企業は品質と価格のバランスを気をつけないと存続できないかもしれない。