『リベラリズムはなぜ失敗したのか』パトリック・J・デニーン
私がモヤモヤして言語化出来なかったことを簡潔にしてくれた本だった。
現代の先進国社会はリベラリズムの拡大と共に個人の自由と権利が拡大したと考えられている。
しかし今の社会は制度疲弊をきたしリヴァイアサンを想定したジョン・ロックも驚くほど国家権力が個人に介入出来る社会が誕生した。
本書は制度疲弊や膨張した国家権力といったもの原因はリベラリズムにあると論じている。
第一章、第二章はリベラリズムの歴史や考え方を色々述べている。
しかしその書き方は私にはかなり読みにくいものだった。
人名が沢山出てきているのとリベラルという考え方自体馴染めないため読むのに労力を必要とする。
第3章アンチカルチャーとしてのリベラリズムから具体的な事例紹介となりだいぶ読みやすくなった。
本書はリベラリズムの性質は個人の自由を伸張するために国家権力と密接に結びつき少数の賢人のみが投票する民主主義を推進すると考えている。
曰く多くの愚民に選挙権を与えると「適切な」リベラリズムの推進の阻害となり社会の停滞を招くと考えている。
問題なのは自由や個人の権利を拡大すると外皮を被っているが、実のところは少数の人間による独裁国家を考えているダブルスタンダードな思考にある。
こうした考え方は文化面でも発揮される。
リベラリズムは文化を大事にしていると一般的には考えられている。
しかし多様性を尊重するがあまり全ての文化を破壊している。
これは自由経済やグローバル化によって大量の情報や別の価値観入れることで文化のもつ排他性をなくすことで文化が喪失する。
リベラルな個人の考え方尊重しているが、私のようにリアリズム思考をもつ人間に対して「思考が偏っている」と批判しているのと同じことである。
一件「リベラリズム」という考え方以外も尊重しているようにみえるが、他は不自由で偏った思考であるため批判し排除しようとする。
多様性を重んじているようで最終的に否定するのだ。
人間という近視眼的で浅はかな思考をもつ動物であることを失念し、無制限に自己を肥大化した短絡的な愚者がリベラリズムという正体であると私は思った。
とはいえ著者は民主主義や自由を否定するつもりはなく、リベラリズム以降の新しい理論を構築する必要があるとと提言している。
第一に、リベラリズムの功績を認めて、リベラリズム以前の時代への「回帰」願望を持つことは避けるべきである。そうした功績を土台にする一方で、失敗の根源的な原因を捨てなければならない。戻ってはならない。前進あるのみだ。
悲観的でなく常に前向きに未来を見つめつつ、現在の問題点を洗い出す姿勢こそリベラルの在り方を見ました。