美意識について思うこと
以前有名になった1枚の写真がある。
テーブルと椅子と花だけなのに気品さと落ち着いた会談ができる場が構築されている。
この記事ではサウジでの会談写真も掲載されており、いかにも高そうなものがこれみよがしにおいてある。
思うに日本の美意識は引き算で考えられていることを表している。
戦艦大和を美しいと言う人が多い、城のようなどっしりさがある巨艦に魅せられる。
だが大和が搭載している砲に対してあの船体はとても「小さく」作られている。
実際であればもっとずんぐりむっくりな船体に仕上がっていた。
これを様々な技術を駆使してコンパクトにまとめたからこそ、技術の結晶が美としての色彩を放っている。
京都の代表格といえば金閣寺である。
人生で一度みたいと思うスポットの一つではあるが、同時に一度でいいと思わせる外観である。
実際にあそこで茶会を催したくはない。
金色の外観は人目を引くが美しいとは別のものだ。
誰かが言っていたが子供の時は金閣寺を見たがるが、大人になると銀閣寺の良さがわかる。
財政難から銀を貼ることがなかった銀閣寺の方が侘び寂びを感じる。
今の日本企業にも金閣寺やアラブの会談スペースと同じような発想でゴテゴテしている。
ポイントカードと割引用アプリを併用しているヨーカドーもその一つだ。
買い物で一々ヨーカドーアプリを起動させて割引商品を検索させるというコストを消費者にしいている。
買い物を楽しくさせるための発想で作られたと思われる。
だが発想からして終わっている。
買い物の時間を短時間かつスマートに済ませたいと考えている消費者に対して寄り添っていないくだらないアプリを提供するのがコスト増大を招くだけでしかない。
生協やコストコのように何人かでまとめ買いして安く商品を入手することでお得感を出させる方が楽しさを味わうことができる。
洋服の青山やAOKIといった紳士服業界もわかりにくい割引はがきを毎月のように送ってくるやり方も思考停止の産物である。
お得感を演出するつもりが自身の商品価値を極限まで下げることで定価の半額で商品を手にしても高い買い物をしたという感覚だけが消費者に残る。
洋服の青山は複雑な割引制度を廃止したと発表したが、センスのないはがきは相変わらず送付されるのと複雑な割引制度をやめた矢先に2900円以上の小物や19000円以上のスーツ等の商品10%オフセールを実施する。
今の消費者が安易な値下げに対して飛びつかなくなっている現状を理解できていないのだと思われる。
昔から安物買いの銭失いという格言がある。
例えばトップバリューウィスキーに対する評価が当てはまる。
トップバリュのウィスキーを専門誌が評価→あまりの辛辣さと表現力に笑いが止まらない「一編の詩にも見えてくる」 - Togetter
低価格な商品はいくらでもあり、イオン系やドンキホーテでも紳士服を買える時代となっている。
この中で葉書を送って値下げセールを連発しても勝ち目は薄い。
一方でgoogleのような海外勢力の方が引き算を心得ているように思う。
iPhoneやgoogleのトップページには無駄なものがない。
分かりやいかつ使いやすい設計となっている。
amazonのトップページも小売業界の独特なごちゃつき感が少なく見やすく感じる。
消費者に伝えたいことが明確かつ簡潔だからこそできることだと思う。
これから日本企業が生き残るためには美に対する引き算の意識がいるように思う。