香港デモをみた雑感
天安門事件から30年という節目に起きた事件として世界史に記録されるだろう。
米中覇権戦争になりつつある中での象徴的な事件として記録される。
日本ではバランシングのように米国と中国と両方にいい顔をしようとする動きもあった。
特に経団連を連れて中国に行ったことは米国側に誤解を招く行動であった。
また日中の尖閣諸島を巡る攻防でも日本国内に数多くの親中派が外交という対話での解決を求めていた。
だが今回の事件によって対外的に交渉による帰結を見せつける結果となった。
どんなに綺麗事を述べたとしてもネットに溢れる動画によって中国の行動に弁解が効かない状況となっている。
今まで覇権を維持してきた米国のやり方に物申したい国は多い。
しかしそれ以上に新覇権国となった中国に従った場合の遇しかたを見ると中国に最後まで従う国はほとんどいなくなるだろう。
中国が覇権をとるのに必要な行動は米国よりもより良い未来像を魅せることだ。
だが今回の行動は独裁国家にとっては頼もしくうつる。
だがそれ以外には希望をなくす行動であった。
これ以外にも中国の行動は既に多くの国で反発を受けている。
一帯一路でスリランカなどの国に対して多額の経済援助をした。
しかし同時に港湾施設の99年間の賃借を締結する契約もあった。
この行動はかつてイギリスが香港を租借地にするために使った手をそのままスリランカに適用しただけである。
またアフリカなどで中国資本による工事を行うために本国から大量に中国人を連れてきて仕事をする。
そのため現地に資金が投下されない。
他国に土地で中国から資金を与えて工事をし、売上のほぼ全てを中国にもどしている結果となっている。
技術の習得や資本の恩恵を受けることができない挙げ句に環境破壊までしているため現地では中国人との衝突もおこっている。
こういった発展途上国に対する援助は現地では問題となっているが政府まで影響が出ているわけではない。
しかしこの状況を続けた場合情勢不安など現地政府の存続にまで波及することとなる。
特に賄賂など政府高官が待遇を受けている証拠が出てくれば中国を支持することが難しくなる。
米中覇権戦争が長期化すればアキレス腱ともなりかねない。
また中国は近隣諸国に対して露骨に脅迫をするようになった。
遠親近攻外交を展開することでベトナムなどの国に警戒と国防強化を契機している。
一時期中国に寄っていたフィリピンも追い出した米軍を呼び戻す動きをしたり、国際司法に領土問題で提訴したりしている。
これは中国国内の安定化のために対外的な動きをみせる国内向けのパフォーマンスもある。
しかし最大の問題は中国に有力な親しい国が不在であり、周囲すべてを灰色や敵に囲まれているという恐怖心がある。
ロシアやアフリカといった国々にすり寄っている。
しかし根本的にロシアを全面的に信頼することはできない。
ロシアに信頼することができないのは、ロシアという国自体がリアリストであり、中国が不利な状況とみるや米国に鞍替えすることや下手すると満州などに火事場泥棒のように侵攻することもありうるからだ。
逆に言えば中国の体制が安定しているうちは問題ない。
アフリカなどの遠い国は資金が投入されているうちだけ親しくできているだけである。
そう考えると中国の近隣国で親中的な国家は朝鮮半島しかないのだ。
中国からみると周りを親米派国家で囲まれており、グアムや日本、ハワイには米軍が展開している。
この圧迫感からの脱出を求めているようにもみえる。
近隣諸国からの圧迫感と信頼できる有力な親中派国家持たない政府に対する今回の香港デモは鎮圧されるだろう。
国外と対立状態となっている中で起きたデモに対しては必要以上に抑え込む傾向が出るからだ。
国内の不満分子を鎮圧することで政府の威信を保つ効果もある。
逆に香港の反政府派が政府に対してクーデターを起こしたり、各地にいる反政府派と共同歩調ができていない以上デモは長続きしない。
香港デモは応援したくなるが、デモだけでは政府を倒したり、要求を通すことはできない。
軍の力を削いで、自前の軍を整備しない限り力で抑え込まれてしまう。
また今回の要求が仮に通ったとしても、別の締付けを行うことでデモの力を削ぐことに注力する。
その上で要求を撤回するだろう。
結局のところ欧米が抱いていた幻想は今回の事件で打ち消されてしまった。
すなわちマクドナルド理論のように中国に企業が進出すれば中国が民主化するという幻想のことだ。
また日本のリベラルと呼ばれる連中が今回のデモで黙っているのも民衆に目が向いていないことを示している。
今回の事件はより一層敵と味方を分ける働きをし、米中覇権戦争に一層の激しさを加えたことになった。